「遊びの保証」で「どうぞ」ができる子に。

町内の保育園が老朽化している事を背景に保育園民営化が進められているウチの町です。
いくつかの町営保育園が閉園になり、かわりに新しい保育園がぽつぽつと建て替えられている真っ最中です。
ちょびんが通っている保育園も今年度で閉園になることが決まっていて、近くの保育園と合併して大きくて新しい保育園を建設中なのです。

そんなことで、新しい私立保育園だらけなウチの町なのですが、どちらの保育園でも子育て支援事業として園の解放をしてくれているのです。
園によって年齢に合わせたプログラムを組んで集まる所や、一ヶ月に一回の解放日やイベント日に招待されるなど様々なスタイルがありますが、いつもと違う場所で、同じ年代のお友達と遊ぶというのは親子共々とっても良い刺激になっています。
土曜日と隔週日曜もやっている子育て支援センターとあわせて、天気の悪い日も夏の暑過ぎる日も子どもを遊ばせられる場所を提供してもらえるのは本当に大助かり。

その中でも、月〜金までほとんどの日の午前中を解放してくださるS保育園さん、いつもお世話になっています!
支援ルーム担当だったH先生がこのたび主任になられて事務所でのお仕事に変わられたそうなのだけど、ちょびんの頃から現在かめまで気にかけて頂いています。
楽しくて、いろいろな事をさせてくれる先生で、毎日でも通いたくなるH先生の支援ルームです。

イスをひっくり返してバイクに見立てて乗ってみせるかめに、「危ないから止めようね」とか、「ひっくり返っていたらおかしいね」とか普通なら声を掛けるところだと思うけれど、
H先生は「かめくんはいつも新しい遊びを思いつくよねー!発想力があるんだねー!」
と、褒めてくださる。
支援ルームに集まった子ども達はみんな、「きれいな色塗ったね」「ハサミ使うのが上手だなあ」「ナイスチャレンジ!」など、ひとつは褒めてもらえる。
かめも私も大好きで、ちょびんを保育園に送った後は「せんせいのとこ、いく!」が定番のセリフ。




一番の「さすがH先生」というところは、おもちゃの取り合いの仲裁。

幼児の集まるところ、おもちゃの取り合いあり。
H先生は互いが成長するやり方を知っておられる。

先にAくんが遊んでいた4台の車をBくんも使いたくなり、4台のうち1台をB君が持っていこうとして取り合いが勃発したとします

「あと3台あるから、1台貸してあげてもいいじゃない」と、私がA君の親ならいいそうだけれど、H先生は違う。

H先生「ごめんねBくん、この4台、A君が使っていたんだ。貸してって、聞いてみようか」
B君「かして」
A君「だめ」
H先生「そうだね、使っていたもんね。終わったら貸してくれる?」
A君「うん」
H先生「じゃあね、B君に終わるまで待っててねって、言ってあげてね」
A君「おわったらね」

ここまで約束してくれたら、B君がどんなに泣いても違う遊びに誘うなどして待たせる。
そうするとA君もその後案外すんなりと貸してくれる。

A君「どうぞ」
H先生「A君、ありがとう!B君、よく待っていられたね!」
B君「ありがとう」

2人とも、わっしゃわっしゃと頭をなでてもらって、また、遊びを始める。


と、こんな具合なのです。



最初の「かして」で、我慢してかしてあげるような子には、「いま使っているって言ってもいいんだよ?」というフォローまで。
普通、当然。と、思われるかたもおいでかも知れませんが、私には目から鱗でした。
この事を、「遊びの保証」というそうです。
最初に使っていた子どもに満足するまで使える権利を保証する事で、気持ちよく「どうぞ」を言えるようになる。


現在を生きている僕にとって、いま、4台の車でノリにノっているところを1台でも貸してやる訳にはいかないのです。2台がそこらへんに置いてあっても、次のシーンで出番があるのです。

 4台もあるから、分け合って。
 この中で、どれなら貸してあげられる?
 今まで使っていたんだから貸してあげて。
 あなたより小さい子だから、貸してあげて。
 お手々は2本なんだから、2個で十分でしょ。
 意地悪しないで貸してあげようよ。
 ここのおもちゃは、みんなで遊ぶおもちゃなのよ。

そんな事を言われても困るのです。
次のシーンの時にそこらへんに置いてある2台が無くなっていたら一大巨編が完成しないのです。
だから、貸してやる訳にはいかないのです。

想像するに、「だめ」にはこのような意味が込められているのではないかと。


む。
先生がB君を向こうに連れて行ってくれたぞ。
よーし。これで安心して一大巨編を完成させることができる。
・・・
うむ、完成だ!!!
次は君が主役のスペクタクルを展開する番だぜ!というバトンを込めて「どうぞ」と言える訳ですね。


満足感、達成感を感じながら貸してあげた→褒めてもらえた
と、
もっと遊びたかったけど、我慢して貸してあげた→褒めてもらえた
結果は同じ「貸してあげた」であっても、2歳、3歳くらいの幼児にとってどちらが次の意欲を育てていけるだろうか。
我慢する経験を多く積んだ子が真に我慢できる子になる訳ではありませんね。
自分が満たされたその後に、他人を思いやり、譲ることができる。
この順番は、大人になっても変わらないもの、幼児にとってはなおさらです。




B君も、使いたい→待つ→使える という経験を積めば、次第に待つ事ができるようになる。
H先生によると、してはいけない事を制止させられて泣いてぐずっている時、ちゃんと子どもの中でどこか成長に繋がっているそうです。



しかも、貸してあげられた事を褒めてもらえるときたら、「待ってるし、ちょっと早く切り上げてあげようかな」なんて思いやりなんかも芽生えたり。
一方B君は待っていた事を褒めてもらえ、言われなくても自然に「ありがとう」が出てきたりもする。
素敵なコミュニケーションが育っていく現場を目の当たりにできます。




ウチの兄弟でも実践。
取り合いしているところに「終わるまでまってね」と言うよう促してみると、次の「どうぞ」が驚くほど早く出てくる。
早い時は、一瞬で「どうぞ」する時もある。オイそれ、本当にさっき取り合っていた魅力的なおもちゃなのかと問いたくなるほどに。

もう次のおもちゃにしようかと思っているところでも、「取りに来た」というだけで「渡してなるものかスイッチ」が入ってしまうのではないかと思う。
要は、「終わり」のタイミングを他人に決められたくない。俺が決める。ということかなあ?

といっても、長男が内弁慶で家の中ではわがままを言いまくる困ったちゃんで、なんとも、毎日、兄弟で騒がしいんですが ┐( -"-)┌


皆さんは、このような対応のしかたを知っておられたでしょうか?
例えば、自分の子の遊んでいるおもちゃを小さい子が取ってしまいそうなとき、親御さんの付いている場で「今使っているから、待っていてね」と言うのは
「自分より小さい子に譲ってあげるように言わないなんて、どういう躾なのかしら」というように相手の親御さんが思う場面もあるかと思います。こういうとき、ケースバイケースの対応も必要ですが、先生方などの第三者のフォローがあると嬉しいですよね。


おもちゃを両手一杯に抱きかかえて遊ぶ事もできない、貸してあげる事もできない、そういう子、たまに見掛けます。長男がそんな子でした。
奪おうとする子どもと貸すように言う大人、みんなが敵のように見えているのかもしれません。
それでも、お友達と関わりをもっていくうちに待つ事、譲る事を学んで いまでは保育園で「やさしいお兄さん」を頑張っているようです。
年齢が上がるごとに譲れるようになるのです。
もし、このエントリーを読んでくださっている中に、「我が子はどうぞすることができない」と悩んでおられる2歳、3歳のお母さんがいらっしゃったら、どうか安心してください。
できない事に目を向けるのではなく、
こんなことができるようになった!
こんなおもしろい事をしてみせた!
数ヶ月前よりもできる事が増えている事を見付けていけば、近い将来、きっとどうぞが出来るようになりますよ。
幼少期のワガママは生きる為に必要な過程です。
そう、過程なのです。
まだ、結果ではありません。
じっくりと教えたり、様子を見ていくしかないのです。
ワガママ言うようになった成長を(半ばヤケクソ的に)喜びましょう!
「コノヤロー、ワガママ言うようにまで育ってきたぜヒャッホー!」



という私も、日々の対応でいっぱいいっぱいの、迷走しながらの育児中です。

どんな育児にも100%正解はないし、子ども達はひとりひとりに個性がある。
日々の子育てを頑張っている同士にYELL!!

子育て支援センターなどでもH先生のされているやりかたが広がるといいなと思います。


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楽しく遊んだり、ときには衝突があったり。
それがいい。それでいい。


追記
先日、S保育園で
3歳の男の子がクレヨンと糊とはさみを、
3歳の女の子が紙とペンとシールを用意してさあ、ナニカを作ろう!という雰囲気になりました。
「これ、使いたい、いい?」
「うん、いいよー。あ、赤いペンない?」
「あるある。これね」
「ありがと」
黙々と糊をぬったりはさみで切ったりの途中にかわされる会話。
親達は少し離れたところで見守っていました。

見知った仲良しということもあるかと思いますが、気持ちが通じ合い、思いやりの心で会話していることに、これが未就園の3歳さんだろうかと驚かさせてもらいました。
拍手!





一人目で反抗期前のお子さんをお持ちのお母さんにお願いがあります。

すこし年上で譲ってあげられない2歳や3歳の子どもを見たとき、

「しつけができていないから、どうぞが出来ないんだわ」

「こんな風にならないようにしないと」

と、

思わないであげて下さい。

上にも書きましたが、過程にいる子どもさんです。

問題があるのではなくむしろ、順調に育っている子どもさんです。

温かい目で見守ってくださることを切に願います。





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Comment

こんにちは。
『遊びの保証』、はっとさせられ思わずコメントしてしまいました。
まさに今日、
『今まで使っていたんだから貸してあげて。
 あなたより小さい子だから、貸してあげて。
 意地悪しないで貸してあげようよ。
 ここのおもちゃは、みんなで遊ぶおもちゃなのよ。』
と息子にいったばっかり。

そうですよね、急にそんなこと言われても子供には子供の都合も予定もあるんですよね。
『どうぞ。』をさせなければ、とわが子の気持ちを後回しにしていました。
H先生、とっても素敵な先生ですね!
『遊びの保証』、心にとめて子育てしていきたいです。

いいお話、ありがとうございました!
ひより。 さま
こんにちは!

ながーくうだうだと書かせてもらいましたが
読んで下さってありがとうございます!

>『どうぞ。』をさせなければ
ついついそう考えてしまいますよね。
いざこざをおこしている最中ほど、周りの視線が
「子育て検定、採点中」
といっているように思えてならないから、大人のいうエライ子になるように強要してしまう事も時にはあります。

「同年代の子と遊ばせたいけど、他の子にどうぞできないからor取ってしまうから行けないのよね」
という考えから支援センターなどから足が遠のくお母さんもいらっしゃるのではないかと思います。
そここそ成長のチャンスと捉えるH先生は本当に素敵な先生なんです!
子どもの目線に立つって、こう言う事なんだ!と改めて思った次第です。

  • 2013/01/30 15:21
  • ちくた
  • URL
初めまして。mahikaと申します。
VネックTシャツの作り方を探していてここにたどり着きました。

「遊びの保証」のエントリーを読ませていただきました。
すごい。なるほど。子どもの心に沿うってこういうことなんですね…。

うちには3人子どもがいるんですが、いっつも言ってました。
「一個くらい貸してあげてもいいじゃない。」
「今使ってないんだからかしてあげてもいいんじゃない?」

でも、そうですね。子どもには子どもの理屈…というか言い分がきっとあるんですよね。

目からうろこの気分です。
さっそくうちでも実践してみようと思います。

ありがとうございました。

mahikaさま
はじめまして!
読んで下さってありがとうございます。

この方法、ご存じない方も多くいらっしゃるようですね。
私も知りませんでしたが、実践されているS保育園は本当に物の貸し借りがスムーズなんです。
利用者みんながこの方法を知り、実行されていることで、ぐずっている子がいても「あの子はいま、成長中なんだ」とやさしく見守ってもらえる場所であるのだと思います。
多くの親子が集まるような場所では様々な考え方があるので、なかなか実践が難しいこともあると思いますが、できそうな時はやってみて下さいね^^
  • 2013/02/01 22:52
  • ちくた
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